認知症に対する薬物治療の適性化を測るために、医療と介護の連携を目的とする新たな行動心理症状の評価法「BPSDスケール」を私たちは考案しました。こちらのページでは、「BPSDスケール」の詳細や普及活動についてお伝えします。
それはある利用者さんの発言がきっかけでした。
「私は精神科からもらった薬で体が悪くなった」と毎日、口癖のように言いながら良く泣いていました。
原因が薬であったかは、定かではありませんが、ご本人がそう思うのなら、はっきりさせないといけないと私は考えていました。
またある時、別の認知症で周辺症状が激しい方がおられ、興奮が収らず、血圧も上がり、心臓への負担も懸念され、少しリラックス出来るお薬を処方して頂いたところ、極端に活気が無くなり、以前の状態とすっかり変わった利用者さんを目の当たりにしました。
以上のような出来事から私達は「何かもっと出来ることは無いのか?」と心の底から思うようになり、医療従事者側へ偏りの無い判断で薬の処方をしてもらえるように、またこの処方で良かったのか、悪かったのか判断できるようなものは無いかと協議し、出来上がったのがBPSDスケールでした。スケールを導入して6年が経過しましたが、誰にとっても良いスケールだと分かり、現在は他の困っている施設さんの手助けになればと、普及推進に力を入れています。
代表 羽田野美和子
一目見て正確に伝えられるように工夫を重ねて
BPSDスケールとは、認知症に対する医療と介護の連携を目的とする新しい行動心理症状の評価法です。一人一人に最適な薬物治療を平行して行っていくためには、治療に対する効果などの情報を介護現場から病院の先生へ正確に伝えなければなりません。
そこで薬物治療前後の利用者さんの様子を、私たちがチェックシートの項目に沿って確認していきます。病院の先生やご家族さんがパッと一目で状態がわかるように、3つの工夫をシートに施しました。
1つ目は三角形表示。状態を3段階に分けて三角形で表記する点です。症状が激しい時には一番角度がある表記に、軽い場合は角度をつけない表記にします。
2つ目は色分け。昼は青色、夜は赤にすることで、1日の変化がわかります。
3つ目は三角形の数量。月ごとの症状の回数や頻度を三角形の数量で表します。シートをつけて病院の先生に伝え、先生から症状に応じた薬をいただく。シートを前月比較など行うと効果が判明します。このような工夫を施して、一人一人に最適なケアを目指しています。
施設長 梅澤功樹
私たち看護師は、受診同行や往診を対応することが多く、症状や状態などの情報を正確に伝える事を難しく感じていました。特に精神面(BPSD)などは、いつ頃からどんな症状で、どの様な経過を経て、今の状態にあるのかを記録をさかのぼって説明するのは難しく、対応する職員によって、言葉や伝え方で主治医の捉え方が変わって来ます。そうすると内服の種類や量などに影響してきます。
しかし、BPSDスケールを活用することで主治医や専門医への情報提起が正確になり、主治医や専門医に対して自分なりの考えを伝えられるようになりました。その結果、薬の調整が可能となり統一したケアにも繋がりました。
看護主任 佐藤夕子
医療と介護の相互情報共有でより良いケアを
BPSDスケールを始めて今年で7年目(2018年現在)。現在、医療機関及び介護施設系(特養・老健・グループホーム・有料老人ホーム等)の賛同協力を頂き、国立大学医学部の倫理委員会(IRB)の承認を受け、同大学神経内科学講座研究室において有用性の立証研究へ移行しました。
また、県推進事業のIОTラボに認定され電子化に向け産・官・学連携で進めております。普及が進めば地域におけるBPSDに対する医療と介護の相互情報の共有が可能となり、適切なケアや薬物的治療、さらに介護負担軽減への数値的結果も期待が望めます。
新たな連携モデルケースとして発信、全国への普及推進を目指しております。「より詳しく聞いてみたい」「うちの介護施設でも取り入れたい」といったご相談はいつでもお気軽にご連絡ください。
※エーザイ株式会社「homedi」サイトで私たちの取り組みを紹介していただきました。
>>>「こだわり介護で生まれた取り組み・考え方とは…」
TEL: 097-578-1177
営業時間: デイサービス:9:00~16:30
※入所(有料老人ホーム)は24時間
交通・アクセス:
犬飼バイパス三重方面下車1分
JAおおいたぶんご大野犬飼隣
施設見学は日曜日以外の午前中は可能ですが事前にご連絡ください。